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2019/04/27
オープンスキルの壁
陸上三段跳びの元世界記録保持者(1981年~1996年まで保持ってすごいですよね)で米陸上殿堂入りしている、ウィリー・バンクス氏は、今では良く見かける助走前に観客に手拍子を求めるパフォーマンスの先駆者として知られています。
自分で飛び出すタイミングを作るのではなく観客の盛り上がりとともに共鳴する様子は当時とても斬新でした。
大舞台に強い選手らしい、競技の枠にとらわれないパフォーマンスでした。
陸上競技はクローズドスキルに分類されていますが、本番力のある選手になるにはその要素では不十分です。
試合に強い選手は種目にかかわらずオープンスキル的な要素に長けていると言えます。
運動スキルの分類において、「オープンスキル」とは、外的要因の変化する状況で使える技能とその選択と判断の要素を含むスキル。サッカー、バスケットボール、バレーボール、格闘技 などが該当するとされています。
それに対して「クローズドスキル」とは、外的要因の変化しない比較的予測可能で安定した状況において技術の要素が多く、状況判断を含まず自分のペースで行うことのできるスキルで、陸上競技、体操競技、水泳などでゴルブはこちらに分類されています。
この分類は、種目に言及されていますが、あらゆる競技は実際には技術も状況判断の迅速さもどちらが欠けても本番に強いパフォーマンスを発揮することはできません。
日本人はオープンスキルが苦手でクローズドスキル向きであるとは比較的昔から言われていました。
ひとつひとつ基礎を積み上げた練習によって技術を習得していくのが得意であるということは、遺伝子的にも明らかになっています。
日本人がセロトニンの再合成システムのはたらきが鈍いことと、ドーパミン受容体の感受性が強い事が原因とされ、セロトニンの不足と少しのドーパミンで満足してしまう傾向が、不安になりやすくチャレンジを恐れ、リスクを嫌うメンタリティに傾けているとみられています。
こういった遺伝子特性を「不安遺伝子を持つ」という言い方もされます。
この傾向の遺伝子特性によって直感や反射による意識決定よりも、より失敗の確率が低い方を選択する意思決定をしがちだという事がわかっています。
これにはしっかりとした準備、練習を怠らない傾向というメリットがある一方、危機回避を優先するあまりに判断の遅れや躊躇につながり決定機を逃す原因ともされています。
これを「ブレーキが強く、アクセルが弱い」という言い方をされることがあります。
対して欧米人はドーパミンの受容体の感受性が弱いために常に刺激を求め、直感的に意思決定することを好む傾向であるといわれています。
これは脳における情報処理の傾向の違いとも言える部分です。
「アクセルが強い」ともいえる意思決定傾向により、選択と判断の迅速さが必要なオープンスキルに優位性のある傾向だとも言えます。
これはコーチと選手の関係性にもあらわれていて、日本人の場合はとかくクローズドスキル型の選手、指導に偏りがちになりやすいことになり、指導者側は論理的で説得力のある細かい指示をしたがり、指導を受ける側は納得感があり確実性の高い指導を求めることになります。
つまり、どちらの側も内的集中をうながすほうに流れていくというきわめて残念な状態になってしまいます。
テニスのサーブ、野球投手の投球、ゴルフのスイングやパッティングといった種目の中の個々の要素にもクローズドスキルといわれている要素がありますが、「プルペンエース」という言葉があるように、練習で優れた技能を発揮できても試合になるとまるでダメということは珍しくありません。
「練習でできないことは試合ではできない」とはよく言われることですが、
「練習でできるからといって試合でできるとは限らない」ということも言えます。
これが厄介にも、「どんなに厳しい練習を積んだからといって試合で発揮できるとは限らない」という身も蓋もないという横顔ものぞかせています。
少なくともクローズドスキルの範疇にとどまっているうちは重要な試合で結果を出すには心もとない感じがします。
かといってオープンスキルにつながる指導は、暗示的学習などの外的集中を促す指導法ということになるわけですが、ともすれば周囲が理解しがたい指導に見える事があって評価が非常に難しいです。
どうすれば良いのでしょうか⁇
クローズドスキルとオープンスキル、
内定集中と外的集中、
明示的学習と暗示的学習、
モーターラーニングと……
だいぶ核心に近づいて来ましたね。