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2019/03/23
動作学習を「系統発生的に個体発生する」ようなことは可能なのか
ある動物が発生する過程(たとえば受精卵から誕生まで〕は、その進化の道程をなぞるように行われるという説があります。
「ヘッケルの反復説」という生物学の仮説で、生物発生原則とも言われ、
『個体発生は系統発生を繰り返す』
という言葉の方が有名かも知れません。
何億年もかけてきた進化の歴史の過程を誕生前に経てしまうということになるのでしょうか。
体操競技では、30年前の金メダル級の技は現在小中学生が取り組む技になっていたりするそうです。
動作習得による技術向上を「進化」ととらえれば、先人の血の滲むような努力によって開発された技をあっさりとスピーディーにマスターし、さらに先に進むその様はまさに、
「系統発生は個体発生を繰り返す」
と言う言葉を思い起こさせます。
はたしてゴルフスイングは進化しているのでしようか。
30年前にジャンボ尾崎さんや、川岸良兼さんが糸巻きバラタカバーのボールで320ヤード先のフェアウェイど真ん中に飛ばしているのを見ているので少し複雑な気持ちです。
競技特性が違うんだということで以前の私も納得して思考停止していました。
『ゴルフは「自転車が乗れるようになれば一生乗れる」のとおなじようにはいかない』ということを昔から良く言われていました。
しかし、もはや様々な前提条件を整理すればモーターラーニングの観点から、現在ではそのような考え方がむしろ短絡的で辻褄が合わないところがどうしても出てきてしまっています。
さらにクラブやボールの進化は間違いなくゴルフをやさしくしているし、最近のPGAツアーでコンスタントな成績をあげている選手のスイングスタイルを見ると、ある一定の法則性を感じさせるところまでは来ているように思います。
つまり、今やゴルフスイングの標準化は可能なのではないかと思いはじめています。
ゴルフスイングが標準化されたものが確立しているのであれば、習得はもっと容易になるはずです。
ならば平準化を邪魔しているものは何なのか。
そこを曖昧に神秘的にする事で成り立っている世界があります。
それによって混乱することで困る(イップスなどで)人もたくさんいることもまた事実です。
ただ、運動生理学において、モーターラーニングよりもトランスファーラーニングの方が難航することが多く、
とりわけゴルフはこのトランスファーラーニングの項目だらけです。
まずは、前提条件を整理して、モーターラーニングを確立して標準化することこれから考えていきたいと思います。
2019/03/12
ローテーションプラスティに見る動作学習
「ローテーションプラスティ」という、形成外科技法があります。
ガンなどで、太ももより下を切断し膝を失った場合に、足首の少し上付近を180度反転し結合する外科手術です。
実際にこの手術を受けると、手術直後は足の動かし方がわからないそうですが、リハビリを続けるうちに自分の意思で、元の足首が膝の動きを代用し義足を装着して歩けるようになるそうです。
脳か足首が膝の代わりの役目を果たすように動作の割り当てを再配線して学習するという作業です。
このような自分を操作する感覚の割り当てを変える再配線的な作業は、俯瞰投射法で新しい感覚を取り込むことと共通しています。
感覚を反転する必要性のある部分などは、「道具」の特殊性を扱うゴルフとの強い共通点を感じるところもあります。
運動学習のプロセスについて非常に興味深い事例です。
スポーツなどの動作を習得するときに、習うより慣れろとはよく言う話ですが、体で覚えるというイメージは誰もが持っていると思います。
だからといって、本当に体の各部が動きを覚えているということではなく、命令は脳から発せられます。
リモートコントロールやテレパシーではなく物理的に神経という「有線ケーブル」による伝達で筋収縮が行われるというのが動かしがたい事実を示しています。
(脳からなんらかの信号が発せられているという点においてはジストニアも例外ではありません〕
近年のゴルフのレッスンでは、ゴルフにおける「物理現象の数値化」と「動作の映像的可視化」を利用して動作習得を効率化することに軸足がとられています。
たしかに数値や映像は、教える側にとって非常に便利だし、教わる側にとっても共通認識の指標としてはこの上ないものだと思いますが、いつも、
「何かが足りない」
と感じています。
これには動作スキルの学習の本質を見直す必要があるのではないかという思いが強くなって最近研究しているところです。
しかし「困った」事にこのような疑問に対する最新の科学的事実は我々のような「ティーチング」や「コーチ」をする立場の者のアイデンティティの全否定になりかねないような不都合な事実が多い事がわかってきました。
わかりやすく言えば、レッスン動画や、レッスン記事、レッスンプロのレッスンドリルが上達を邪魔している可能性があるという事実です。
遅かれ早かれ誰かが言うことだと思うので、これからそのような「不都合な事実も」随時発表していこうと思っています。