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2019/03/12
ローテーションプラスティに見る動作学習
「ローテーションプラスティ」という、形成外科技法があります。
ガンなどで、太ももより下を切断し膝を失った場合に、足首の少し上付近を180度反転し結合する外科手術です。
実際にこの手術を受けると、手術直後は足の動かし方がわからないそうですが、リハビリを続けるうちに自分の意思で、元の足首が膝の動きを代用し義足を装着して歩けるようになるそうです。
脳か足首が膝の代わりの役目を果たすように動作の割り当てを再配線して学習するという作業です。
このような自分を操作する感覚の割り当てを変える再配線的な作業は、俯瞰投射法で新しい感覚を取り込むことと共通しています。
感覚を反転する必要性のある部分などは、「道具」の特殊性を扱うゴルフとの強い共通点を感じるところもあります。
運動学習のプロセスについて非常に興味深い事例です。
スポーツなどの動作を習得するときに、習うより慣れろとはよく言う話ですが、体で覚えるというイメージは誰もが持っていると思います。
だからといって、本当に体の各部が動きを覚えているということではなく、命令は脳から発せられます。
リモートコントロールやテレパシーではなく物理的に神経という「有線ケーブル」による伝達で筋収縮が行われるというのが動かしがたい事実を示しています。
(脳からなんらかの信号が発せられているという点においてはジストニアも例外ではありません〕
近年のゴルフのレッスンでは、ゴルフにおける「物理現象の数値化」と「動作の映像的可視化」を利用して動作習得を効率化することに軸足がとられています。
たしかに数値や映像は、教える側にとって非常に便利だし、教わる側にとっても共通認識の指標としてはこの上ないものだと思いますが、いつも、
「何かが足りない」
と感じています。
これには動作スキルの学習の本質を見直す必要があるのではないかという思いが強くなって最近研究しているところです。
しかし「困った」事にこのような疑問に対する最新の科学的事実は我々のような「ティーチング」や「コーチ」をする立場の者のアイデンティティの全否定になりかねないような不都合な事実が多い事がわかってきました。
わかりやすく言えば、レッスン動画や、レッスン記事、レッスンプロのレッスンドリルが上達を邪魔している可能性があるという事実です。
遅かれ早かれ誰かが言うことだと思うので、これからそのような「不都合な事実も」随時発表していこうと思っています。
2019/01/20
ジストニアとイップス
ジストニア(dystonia)とは、「中枢神経系の障害による不随意で持続的な筋収縮にかかわる運動障害の総称を言い、 姿勢異常や、全身あるいは身体の一部が捻れたり硬直、痙攣といった症状が起きる」とされています。
イップスと似たような症状は「職業性ジストニア」として分類されていて、ピアニストなどに出る現象などが含まれています。
ピアニストにあらわれるジストニアというイップス的な症状は、
「決まったタイミングで決まった鍵盤をきまった強さで叩かなければならない」
という強度のストレスにさらされてきた一流のクラシックのピアニストに多く出る症状とされていて、即興で演奏が許されるジャズピアニストにはほとんど出ないそうです。
これはイップスを脱出する重大なヒントが隠されていて、つまり高い精度を要求されると「失敗が許されない」極度のプレッシャーに対して人間の仕組みとして何らかの現象が起こっているという可能性があるということです。
ここに人間が進化する過程で培われた自己防衛本能が介在する可能性が高いというのが私の考えです。
失敗する前に抗しがたい強烈な力で止めさせようと身体が要求する反応でであって、これは自己防衛本能のなせる業ではないかいうことです。
自分自身の体は自分自身を守ろうと一生懸命なのだけれど、それが逆に自分自身を苦しめるというアレルギー反応的な自己矛盾に近いかもしれません。
「自分の体は実はイップスの症状で自分を危険から逃がそうと、守ってくれようとしているのだから、自分自身の味方なんだ」と自己受容する前提が必要なのかもしれませんね。
2018/12/27
錦織圭選手が垣間見た「イップス」とは
錦織圭選手は今シーズンの不調時に「イップスになったのではないか」と感じた時期があった事を告白していました。
右手首の怪我が長引き、痛みを引きずりながらプレーをしていくうちに、強い痛みが出るトップスピンをかける動きが出しづらくなったそうです。
そのうちにボールのスピンコントロールが上手くいかなくなり、相手コートに入らなくなり、どうしていいかわからなくなったと語っています。
その時、本人は「イップスになったのではないだろうか?」と思ったそうです。
イップスは、ある意味「痛み」というのがキーワードになるのかもしれません。
それが肉体的な「痛み」であったり、「痛い目に遭う」という事実であったり、「心の痛み」であったり、・・・
心身が「イヤだな」と思うようになればイップスの原因となりうるという意味では、
『イップスは誰もがなる可能性がある』
ということが言えます。
イップスは、ある種の「恐怖」と「不安」に連動しています。
この場合、痛みへの本能的恐怖がそれを避ける防衛本能と結びついて自分では不本意なおかしな動きに結びついています。
その点で、イップス系の反応と言って間違いないのですが、この動きの神経回路構築前に早めに痛みがなくなることが重要です。その点で痛みが長引いたり、痛みを我慢してプレーしたりすると悪い方に流れが行くので注意が必要です。
怖いのが、おかしな動きの神経回路が構築された後であると痛みがなくなってもおかしな動きが残ってしまうことです。元々が痛みへの本能的恐怖だったものが痛みがなくなったにもかかわらずイップスが出てしまうということになります。
それはもはや「痛みへの恐怖」ではなく、「得体の知れない不安」ということになります。
イップスの改善では、「恐怖」よりも「不安」の方が深刻になり、治すのがたいへんです。
錦織圭選手はその手前で済んだということなのでしょう。
2018/12/22
「メンタルトレーニング」は取り組む必要があるのか
「メンタルトレーニング」は取り組む必要があるのか
あらゆるスポーツ競技には「メンタルの強さ」が必要であるといわれています。
特にゴルフではメンタルを重視して語られる歴史が長く、それについて研究する人も書物も多数あり、切り口も様々です・
いったいゴルフに役立つ「メンタルの強さ」というものがあるならばそれはどのようなものなのでしょうか。
ニューヨーク・ヤンキースで活躍した松井秀喜さんは著書の中で、
「自分のコントロールできることに集中する」
という事を力説しています。
そしてそれは、
「自分のコントロールできないことを全く気にしないようにする」
という事も含まれています。
これが書籍のテーマである「不動心」をあらわすものなのでしょうか。
海外でも似たようなことは古くから言われていて、
THE SERENITY PRAYER
O God, give us
serenity to accept what cannot be changed,
courage to change what should be changed,
and wisdom to distinguish the one from the other.
Reinhold Niebuhr
神よ、
変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。
ラインホールド・ニーバー
「ニーバーの祈り」としてアメリカではあまりにも有名な一節です。
言葉の響きには美しさがありますが、、
実際にはこのような決断力と切り替えができる人はかなり限られています。
(俗に「修羅場をくぐってきた場数が違う」人や、情に流されない合理性を持った限られた人になるでしょうか)
時には過酷な現実を粛々と受け入れ、切り替える能力が求められます。
感情に流されずに合理的かつ迅速な判断が必要である例えば「トリアージ」をあつかうような局面ほど、一般的にはしっかりとしたトレーニングを積む必要があるのです。
2018/12/10
イップスの不安や恐怖をメンタルで克服することはできるのか
なぜ、イップスの解消に「ストレスレス」だの「俯瞰投射法」だのとのたまうのか。
その出発点は、イップスの現象そのものを「ストレス反応」であると仮定することから始まりました。
近頃の科学な進歩のスピードは加速していて俯瞰投射法を開発して以降もエビデンスとなりうる多くの科学論文が発表されていますので、今や確信を持ってストレス反応であると言い切ることができるようになりました。
それでも最初は「心理学」を入り口に「神経科学」「生理学」「物理学」など多方面の考え方から正体をつかもうとしてもがいていたところ、一つの源流に突き当たりました。
それが、「進化医学」を基にした考え方です。
「進化医学」とは、
人の病気や症状 について、人類がたどってきた進化の歴史から考えようとする分野です。
私たち人類の祖先は約600~700万年前に類人猿から進化して(チンパンジーの流れから枝分かれし)誕生しました。
人類に進化してからも「食うか食われるか」の歴史がほとんどで、常に、
「捕食される恐怖」と「 飢餓への不安」
との長い闘いの歴史の中で 生き残って来た遺伝子が今に受け継がれています。
加えて、気候変動や天変地異などを含めた厳しい自然環境の中で、数百万年にわたり生き残ってくるための生存戦略が長い年月をかけて遺伝子に刻まれています。
両手が自由になり、遠くまで移動し、荷物を運び、道具を作り、道具を使うことで徐々に脳を巨大化させてきました。
そのような進化の過程で, 飢餓の心配がいらなくなったり、目立った天敵がいなくなったのは、長い人類の進化の歴史から見ると『つい最近』の事です。
『つい最近』から始まった文明の進化のスピードは、生物学的な進化のスピードを比べ物にならないスピードで置き去りにし、あっという間に遺伝子に刻まれている生存戦略を時代遅れのシステムにしてしまいました。
しかし長年を経て培われてきた生存戦略によって遺伝子に刻まれた防衛本能 は、必要性が少なくなった今現在も私たちの中で、襲ってくる敵に対する警戒や、ギリギリの食糧で生き抜く準備を続けています。
「襲ってくる敵に対する警戒」は様々なストレス反応やアレルギー反応として表れ、「飢餓に対する準備」は肥満とダイエットの終わらないループとして私たちを悩ませるという新たな展開になってしまいました。
とりわけ脳における扁桃体の働きによる強力な防衛センサーは、もともとは生命を脅かす敵に対処するものでしたが現代人特有のあらゆる刺激、あらゆるストレスに反応するようになってしまいました。
抗体が見当違いな相手に攻撃することをやめたり、余ったカロリーを溜め込むことをやめて逆にカロリーをうまく処理するシステムに移行したり、扁桃体が反応するレベルを下げるように遺伝子が書き換わるまで人間が進化するのは数万年先になりそうです。
であるからして、我々が対処し得る方策としては、この時代遅れの防衛システムを変えることはできないという前提で、できることを探していくことになります。
そのような前提をもとに不安や恐怖の種類が生物学的にどこから枝分かれして、どちらが優位になって進化してきたのかを探ることが現代人のストレスレベルを下げ、生活の質を上げることにもつながっていくことは間違いありません。
オランウータンの「行動展示」をご覧になったことがあるでしょうか。
北海道の旭山動物園では地上17メートルの高さに20センチほどの幅の鉄骨と綱をつたってオランウータンは軽やかに行き来しています。
スポーツにおけるメンタルトレーニングにまつわる話の中でよく登場する話になぞらえて考えてみたいと思います。
20センチほどの幅の鉄骨が地面の上に「置かれている」とします。
その上を歩いていくのはそれほど難しくないでしょう。
しかし、それが17メートル上空だとしたら、人間はオランウータンのようにこれほど軽やかに渡ることができるででしょうか。
進化医学を基にすれば、これを心理面やメンタルだけで克服することはできないというのが私の考えです。
(「イップスでお困りの方へ」へ つづく)