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2018/11/15

イップスに相関する体性感覚野

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大脳皮質の運動野と感覚野には身体各部位に対応する領域があります。その部位に対する大脳皮質の面積は、脳とのつながりの大きさを示すといわれています。

 

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スマホやパソコンのストレージみたいに、使われている面積が広いということはそれだけ担当する仕事量が多いということが考えられます。

 

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この図も脳の表面積を体の各部位の大きさとして比例させてあらわしたものです。

特に領域が広いのは手首から先の部分です。手先は繊細な仕事も多く、生活や仕事で活躍する機会が多岐にわたります。

脳はその場面場面の動きを学び、覚え、習得します。とても器用で繊細な動きを脳が大量に記憶しています。

一方で、繊細な動きを伝えるさいに心理の微妙なニュアンスや情緒的な揺らぎをひろって動きとして表出しやすいという面があります。

このような反応が動きとして出たことに起因する「失敗」の記憶が、恐怖と結びついたときにイップスの症状が出始めます。

それを何度か繰り返し、やがてストレス反応と紐づけされると心理面とは関係なく無意識に症状が出て慢性化します。(このように心理面との相関性が微妙になると「不安」になります。「不安」への対処がイップスではキーポイントになります。)

もうこうなると「気の持ちよう」ではどうにもできなくなるのです。

 

手っ取り早い方法としてよく用いられるのは、このような反応を起こす手先の部位ではなく、体幹などの部位を使って動きを構築することにより、イップス的な動きを防ごうというものです。

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図にあるように、体幹を示す部分はかなり狭い領域ですからある意味「鈍い」部位です。

パターやアプローチなどで、不都合な動きが出たり、動きが滞ってしまった場合に、なるべく「手先を使わず」に体幹を意識すると一定の効果があるのはこのような理由があるためです。

ただ、「リストの使い過ぎを抑える」などというざっくりとした対応でお茶を濁すと、やがて症状の「グレーゾーン」を増やしていくだけなので、その動きもやがてイップス的になっていくので注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

2018/11/14

イップスの我々にも役立つ「自己超越」とは

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イップスの我々にも役立つ「自己超越」とは

 

我々も自己超越出来る??」

スポーツニュースで流れる、松山英樹選手の活躍、もしくは錦織圭選手、大谷翔平選手らのような世界を舞台にした活躍は私たちの気持ちをとてもワクワクさせますね。

彼らの活躍は彼ら自身の自己実現の枠を超えて、もはや国民の感情を左右するほどのスケールになりました。



心理学者のアブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向けて絶えず成長をしていく」という理論を唱えて、人間が持つ欲求を5段階にあわらしました。

晩年にマズローは、さらに5段階の欲求階層の上に実はもう一つのステージがあると付け足しました。

それが、「自己超越欲求」と呼ばれる段階です。

自己超越欲求とは、端的にいえば自己実現を超越して自分だけでは作り出せないモチベーションで、言わば「世のため、人のため」にということになります。

彼らの挑戦は最早富の為でもなく名誉の為でもなく、おそらく無意識のうちに「自己超越」的な夢の段階に達しています。

石川遼選手や森田理香子さんも一度は「自己超越」的な目標のステージへ到達しかけました。(例えば日本人による海外メジャートーナメント優勝は、日本のゴルファーの夢であるように)

これを「自己超越欲求」として大いなる力を味方につけるか、外野の雑音がかける重荷のプレッシャーを受けて自己実現へ次元を下降させるかでモチベーションとその後の行動はは大きく変わります。

自己超越欲求をイップスを乗り越えるためのモチベーションの炎を燃やす燃料にできれば心理的にも大きな力になります。




近年の心理学の研究では、このようなステージに到達した者のみが許された欲求というというだけではなく、一般の人々にもこの考え方が活かせるという事が分かってきました。(単なる綺麗事というわけではありません)

自分のためだけに頑張るのには限界があるのですね。





 

2018/10/31

森田理香子さん来季ツアー活動を休養

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森田理香子さん来季ツアー活動を休養するということが報道されました。

ここ数年は、イップスに悩まされている様子でしたので、再起がなかなか難しかったのか、むしろ悪化してしまったのかもしれません。

実績もあり、海外でも活躍できる資質を持つ選手だけに周囲の期待も大きく、苦境に手を差し伸べる人も多かったであろう中でのツアー活動休止の決断は、相当深刻な状況だったのではないかと想像されます。「事実上の引退」と報道するところもありますが事実だとしたら非常に残念なことです。

もし、今後、復活を目指し再起を期すことがあるとするならば、最初の取り組みを慎重にしてほしいと思います。

プロスポーツ競技者は、絶えず過酷な相対的評価のストレスの渦に巻き込まれます。そのような中、スランプに「向き合う」と、結果を焦って様々な対策練習にやみくもに手を出してしまいます。そういう状況では、「いったい何に向き合っているのかがわからない」ということが起きます。

ここまで来てしまった段階では、技術練習や理学療法よりも先に取り組まなければならないのが、「エクスプレッシブ・ライティング」という作業です。

「エクスプレッシブ・ライティング」とは、ストレスを感じたことや、ネガティブな感情、思い出したくない出来事などを紙に書く作業です。

トラウマのような出来事が、ふとした瞬間に思いもよらず「自動思考」の中でグルグル駆け巡ることを「マインドワンダリング」と言いますが、エクスプレッシブ・ライティングは、自分の意志でマインドワンダリングの内容と細かく向き合う作業になります。

一見、「忌まわしい記憶の上塗り」になりそうに思えますが、実はマインドワンダリングのように無意識で自動思考がグルグル回っていくのと、自らの意志で反芻した事柄を紙に書くという作業とでは雲泥の差があります。

脳内における記憶システムは、自らの意志で問題を総括するたびに違ったタグ付けがなされ、ニュアンスが少しづつ変化した形で記憶が上書きされることがわかっています。

これを地道に取り組むことで、今まで感じていた「得体のしれない不安感」の正体が次第に暴かれていきます。

正体不明のものによってもたらされていた「不安感」から、「対峙すべき相手」が見えてきたときにはじめて問題解決の歯車が回り始めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2018/10/30

イップスの原因になる「心技体+α」

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イップスの原因になる「心技体+α」とは

 

スポーツでよく「心技体」という言葉が使われます。

この「心」「技」「体」は、そのままイップスの要因の分類にもなります。

「心」はそのまま心理面を主に原因としたものです。

「技」はゴルフ技術を原因とするものです。

「体」は身体の使い方、動かし方を原因とするものです。

初期であれば、その原因を特定して適切な対処を取れば比較的すぐに改善することができます。そのような意味でも、どういった経緯でイップスになったのかという出発点を詳しくさかのぼる事はかなり重要です。

「心」は心理学者やメンタルトレーナーに、「技」はティーチングプロや、仲間のプレーヤーに、「体」は身体の構造に詳しいトレーナーや理学療法士、といったように、解決の糸口をその道の専門家に求めることも多いかも知れません。

 しかし、ここで解決を求める分野を間違ってしまうとイップスか改善するどころかこじらせてしまう事になりますので注意が必要です。

時には、この「心技体」のどれにも当てはまらないケースもあり得ます。

かなり前のことですが、あるトーナメントプレーヤーのアプローチイップス気味の相談を受けた時のことです。本人は自分自身のメンタル面の弱さを嘆いていましたが…

先に言ってしまうと、ウエッジのソールの使い方に原因がありました。

そのプレーヤーの得意なスイングスタイルと、使っているウエッジのソール形状が合わなかったのです。

グラインダーで、ウエッジのソールの一部を削ることで元々のスイングスタイルを変えずにほぼ良化してしまいました。

このケースは自分に合わないクラブ(道具)によって、イップスになりかかっていたわけですから、そのウエッジを使ったまま心理学者に解決の道を求めていたら、根本的な解決に至らずかなりの遠回りになってしまったことでしょう。

私にしてもベースはティーチングプロなので、ゴルフ技術の方に解決の軸足をとってしまい、技術的な解決に偏りがちでしたが、その出来事以来、ゴルフクラブの知識にもさらに気を配り、加えて心理学や運動生理学、脳科学などを研究してなるべく分野別の垣根を取り払い、先入観を持ったり思い込みや決めつけにつながらないようにする事で、無意識のうちに自分の得意分野に引き込むようなバイアスに陥らないように心がけています。

 

 

2018/10/29

イップス気味を放置するとどうなるか

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イップス気味のプレーが出る状態のまま、ラウンドや試合に出ることはどうなのかは、非常に悩ましいところです。

 

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イップスを認めたくない気持ちや、ネガティブになりがちな気持ちを払拭したくて我慢してプレーしたり、怖い気持ちを抑えてポジティブシンキングを心がけて勇気をもってプレーをし続けたりしがちなものです。

科学的な裏付けとしては、中途半端な対策のまま我慢してプレーすることは、事態を悪化させることがわかっています。

ネガティブな結果の心理的な影響は、ポジティブな結果の影響の3倍以上の破壊力を持っています。

つまり、1回のネガティブな結果が出てしまった場合には、3回以上のポジティブな結果が出ないと釣り合わないことになります。

イップス的な症状が出ているときには、ポジティブな結果がこの確率で出ることは極めて厳しいといえます。

次第にネガティブな心理状態に傾いていくことが避けられそうにありません。

ラットを用いて迷路を進ませる実験でも、エサと電気ショックでエサの方に導こうとしても、一度でも電気ショックを受けてしまうとエサがある方の道にすら進もうとしなくなってしまうことがわかっています。ネガティブな結果の破壊力は原始的な脳の反応においても想像以上の影響力があります。

 

しっかりとした効果的な地道な対策で、少しづつ成功体験を積み重ねてポジティブな結果を積み上げていくことが重要なのです。